客室の床材を選ぶとき、いくつかの選択肢があった。輸入材の方が安く、品質も均一だ。それでも信州唐松を選んだのは、価格や見た目だけの理由ではない。

唐松という木について

唐松(カラマツ)は、日本の針葉樹の中では珍しく落葉する木だ。秋になると葉が黄金色に変わり、冬は枝だけになる。材としては、スギやヒノキより硬く、樹脂分が多いため耐久性が高い。一方で、乾燥が不十分だと反りやねじれが出やすい。扱いが難しい材だが、適切に乾燥させた唐松は、年を経るごとに色が深くなる。

富士見町の製材所との関係

Golden Thorn Passの床材はすべて、富士見町内にある製材所から仕入れている。2011年の開業準備中に橘 誠一郎直接訪ねて、乾燥方法と含水率の管理について話し合った。この製材所では、天然乾燥に2年以上かける材を扱っている。人工乾燥より時間がかかるが、反りが少なく、木の香りが長く残る。

経年変化を受け入れる

無垢材の床は、使い続けると傷がつく。色も変わる。それを欠点と見るか、変化と見るかで、材の選択が変わる。Golden Thorn Passでは、傷や色の変化を定期的にオイル仕上げで整えている。完全には消えないが、それでいいと思っている。15年経った今、最初に施工した客室の床は、新品のときより落ち着いた色になっている。

地元材を使うことの実際

地元の木材を使うことは、環境への配慮という文脈で語られることが多い。それも事実だが、実際には輸送コストの削減と、製材所との直接の関係が大きい。問題があればすぐに相談できる。追加で材が必要になったとき、在庫を確認して翌日に届けてもらえる。遠方から仕入れる場合、そうはいかない。

床材ひとつの話だが、素材の選択は宿の姿勢を反映する。Golden Thorn Passの客室に入ったとき、足の裏で感じるものがあれば、それが答えだ。